2024.9 家庭で居場所をなくした子どもをどうやって気づき、救えるか? ~ 会津演鑑例会・劇団俳優座公演「雉はじめて鳴く」を観る

雉はじめて鳴く1.jpg
 9月10日、会津演劇鑑賞会例会、劇団俳優座公演、横山拓也作・眞鍋卓嗣演出「雉はじめて鳴く」を會津風雅堂で観ました。
 ドラマの概要は、下の「あらすじ」を参照していただきたいと思いますが、テーマは、家庭で居場所を失っている子どもをどうやって救うのか、救えなくしているのは何か──だったかと思います。

《あらすじ》
とある県立高校。サッカー部の舞原健はモンスターペアレントの母のことを担任・浦川麻由に相談していた。そんな折、スクールカウンセラーの藤堂智絵が着任し、麻由と意気投合。
その藤堂の相談室に、いの一番に訪れたサッカー部マネージャー奥野早織は「浦川先生と舞原くんが怪しい」と衝撃の告白をする。
教育現場を舞台に、教師と生徒の関係、さらには生徒と親と学校の距離感等を丁寧に紡ぎ、届けるのは――「慈愛」。


雉はじめて鳴く2.jpg
 私たちの周りのどこにでもある問題でありながら、なかなか分かられない問題でもあるかと思います。
 横山拓也さんの台本は、登場人物の〝だれか〟が自分に近いと観客に思わせたり、自分の周りの〝だれか〟を彷彿させる人物配置になっていて、実によく考えられていると思いました。

雉はじめて鳴く3.jpg
 横山台本は、タイトルやドラマ構造を含めて、よく出来ているとも思いました。
 物語に〝雉〟は登場しませんが、高校生・舞原健の名前〝ケン〟は雉の鳴き声で、ドラマの中で健が行方不明になったとき、周りの人達が「ケーン! ケーン!」と大声を出して探し、家に帰りたくない、母親と一緒にいたくない健が、先生や友人の前で初めて本音を語るシーンは、観客に〝ああ、これが雉はじめて鳴く〟かと気づかせます。

 また、劇中に、家を出て行き実家で車椅子の母親の世話をする父親の場面が度々出てきますが、ドラマのラストでは、その父親と母親が、30年後の舞原健と担任だった浦川麻由にそのまま変わるという仕掛けもなかなかのものです。
 2時間の舞台で数多くの場がありますが、それを可能にした杉山至さんの美術も素晴らしかったと思います。舞台中央に回り舞台をしつらえ、その上に高さの異なる数台の弧型の二重舞台と、椅子としても使う数個の方形の箱を配置、そして回り舞台の外側にも高低差のある二重舞台を配置し、回り舞台が動くことにより、その外側の二重舞台とのつながり方も変化するという、実に千変万化の舞台装置で面白かったです。

 全体として舞台は良かったですが、私にとっては役者の声があちこち大分聞こえないところがあったのが残念です。悪く言えば、声の出しかたが〝テレビ芝居〟で舞台の声の出しかたではありませんでした。20年近く前から、他の舞台でも、新劇にはこのような傾向があることを私は残念に思っています。リアリズムを突き詰めてこうなったというのであれば、私は〝違うんじゃないの〟と敢えて言いたいです。


【訃報・弔意】川島宣長さん(湊町刈上場、64歳、地域の様々な活動でご一緒し、市議時代にはご支援をいただきました、9月12日逝去16日葬儀式)
【訃報・弔意】星幸一さん(湊町西田面、66歳、地域の様々な活動でご一緒し、市議時代にはご支援をいただきました、9月12日逝去17日告別式)

この記事へのコメント