2024.6 日色ともゑさんが会津で特別公演 ~ マリオネットの演奏に乗せ茨木のり子さんの詩を中心にした朗読会「ほんとうのやさしさで」
6月6日、会津若松市文化センターで劇団民藝公演「ほんとうのやさしさで」がありました。主催は会津演劇鑑賞会です。
これは、〝特別例会〟と銘打って行われたもので、昨年の11月だったかに行われるはずの公演が、日色さんの急な体調不良により、ポルトガルギターの湯淺隆さんとマンドリンの吉田剛士さんとのデュオ、マリオネットの演奏だけになったことは、その時、このブログでも紹介しました。今回の公演は、謂わば日色さんのお詫びとして行われることになったとお聞きしました。
ステージは、茨木のり子さんの詩を中心にした朗読と日色さんのトーク、そしてマリオネットのお二人を交えてのトークといった構成で、萩原朔太郎の詩も何篇か朗読されました。中でも、私が高校生の時に知り感銘を受けた朔太郎の「旅情」の朗読は、当時の自分を思い出し感動しました。
また、マリオネットの演奏を楽しむコーナーもあり、これも良かったです。マリオネットの特徴でもあるポルトガルギターが醸し出す〝南蛮文化の香り〟について湯淺さんが、開演前に会場の文化センターの緞帳を見て、神戸にある「泰西王公騎馬図」の屏風と同じであることを知った驚きを語り、かつてポルトガルから日本に伝わった南蛮文化に思いを馳せながら聴いくれと言って「南蛮渡来」という曲を演奏しました。実にエキゾチックな香りのする素敵な曲です。
因みに、泰西王侯騎馬図は元々は、会津松平家に伝わる屏風で、現在は会津若松市文化センター文化ホールの緞帳の図柄のものは神戸市立博物館に、そして、それと対をなすものがサントリー美術館にあるそうです。会津若松市文化センターホールの緞帳の原画で、神戸市にある泰西王侯騎馬図の屏風が下の写真です。
ステージの最後に、日色さんは茨木のり子さんの最も代表的な詩「わたしが一番きれいだったとき」を朗読されました。
この詩は、分かりやすいし、難しい言葉は一つとして使われていないけれども、朗読で表現しようとすると、とても難しい詩だと感じました。語られる言葉の背景や、〝わたし〟の心情をどうやって伝えるのかがとても難しいと思いました。日色さんは、抑制した声と感情で、しかも〝わたし〟の凛とした姿を聴き手の私たちに感じさせる素晴らしい朗読、表現だったと思います。もしかしたら、日色さんにとって「わたしが一番~」は、まだまだ新しい表現が出てくる、発展途上の作品なのかもしれません。
日色さんの語る言葉は、一つひとつの音が立っていて、さすがだなと思いました。
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