2023.4.10 会津若松市議会第3分科会が鈴木宣弘東大大学院教授による講演会を実施

4月10日、会津若松市議会予算決算委員会第3分科会(産業経済委員会)が、鈴木宣弘東京大学大学院教授を講師に政策研究セミナーを開催しました。セミナーはオンラインで開催され、産業経済委員や市農政部職員などのほか、別会場で市農業委員と農業委員会事務局職員が聴講しました。

担い手育成と農業所得向上を図る方策の研究━━セミナーの目的
 第3分科会は、鈴木先生に「農業の担い手育成と農業所得の向上」のテーマで講演をお願いし、以下の質問事項をお伝えしていました。

《質問事項》
1 農業を取り巻く情勢について
 ①農業を取り巻く情勢について(米価の下落、TPP、食料自給率の考え方など)
 ②水田活用直接支払交付金制度の運用方針の見直しについて
 ③担い手の育成における課題について(新規就農者への支援策など)
 ④農業所得向上のための取組について(複合経営の推進、農産物の海外輸出など)
 ⑤JAに期待する役割について など
2 原油価格・物価高騰対策について
 ①原油価格・物価高騰が、地域農業にもたらす影響について
 ②国における原油価格・物価高騰対策の今後の見通しについてなど
3 アグロエコロジーに基づく農業の推進について
 ①化学肥料・農薬の原材料不足の背景と今後の見通しについて
 ②アグロエコロジーに基づく農業への転換を図る上で課題となる、慣行栽培からの脱却を図るための行政の取組(役割)について
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 上記のテーマ、質問事項について鈴木教授の講演は、ストレートにお答えになるものではありませんでしたが、農業担い手不足や農業所得が向上しない日本農業・農政の根本的原因がどこにあるのかに対する鋭い視点からの解明がありました。

農業崩壊止める国民的運動のうねりを!
 鈴木教授の講演のポイント・概要を以下に紹介します。
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①日本の食料自給率は、種や肥料の自給率の低さも考慮すると38%あるかないかだ。海外からの物流が停止したら世界で最も餓死者が出る国になる。国内生産を増強しなければならないが、逆に国内農業は生産コストが倍増しても農産物の価格が上がらない仕組みがあり、廃業が激増しかねない状況にある。
②「今だけ、金だけ、自分だけ」の〝3だけ主義〟の日米のオトモダ チ企業が国の政治を取り込み、農家や国民を収奪している。この状況を放置し物流が止まれば、海外に依存している国民の食料はなくなり、農業の崩壊で関連産業も農協・生協も地域の政治・行政も存続できないだろう。今こそ、協同組合や市民組織など共同体的な力が政治・行政と連携して地域で奮起し、地域のうねりを国政が受け止めて国全体のうねりにする必要がある。
③地域の種(種子)を守り、生産から消費まで「運命共同体」として地域循環的に農と食を支えるローカル自給圏を形成する。その1つの核は、学校給食において地場産の公共調達を進め、また、農家と住民の一体化で耕作放棄地を皆で分担して耕すことを進める。
④国産よりも安価とされている輸入農産物は、ポストハーベストの禁止農薬などの影響で命を縮め、高い代償がつくと言わなければならない。消費者も、流通も加工も今すぐ国産に変えるべきことの重要さに気付き始まっている。今後ありうる輸入途絶と消費者意識変化の潮流から有機・自然栽培の方向性を視野に農業生産の あり方を考えるべきだ。
⑤お金を出せば食料を買える時代は終焉した。不測の事態に国民の 命を守るのが「国防」なら、地域農業を守ることこそが安全保障だ。「防衛費を5年で43兆円」の一方で「農業消滅」を進めたら、「兵糧攻め」によって日本人の〝餓死〟は現実味を帯びてくる。〝昆虫食〟を大真面目に語っているが、そのようなことではなく、国は農業にこそ数兆円の予算を早急につけるべきだ。

所得向上のため、みどり戦略活用・食料安保法の必要性など指摘
 鈴木教授は、上記の①~⑤の諸点についてデータを示しながら解説をされ、農業を取り巻く事態の深刻さを強く受け止めることができました。また、「農業の担い手育成と農業所得の向上」を図る上で重要なこと、必要なことは、「対処療法ではなく、生産者や消費者、JAや生協など関係団体が一体となって政治・行政を動かす運動のうねりを作り出し、国予算を大幅に増額させるなど抜本的な農政の転換を図ることだ」との認識を得ることができました。鈴木教授が提唱されている「食料安全推進法(仮称)」を策定し、食料安全保障を強化することは極めて重要と考えます。
 ただ、そうは言っても日々の農家経営に対する対応も一方では必要です。この点について鈴木教授は、昨年度から国で始まった「みどりの食料システム戦略」など国制度を活用することが有効であるとの指摘もされました。
 鈴木教授の指摘される方向での農政の転換には、大きな障害、困難もありますが、われわれは「そうこうしているうちに日本の農業は崩壊する!」現実を目の前にしていることを自覚しなければならないと改めて思いました。

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